【創業百三十年を迎えて】 明治二十四年(一八九一年)上総屋旅館として創業したホテルかずさやは、 お陰様で本年創業百三十年を迎えることが出来ました。 これはひとえにお客様の暖かいご愛顧の賜物と深く感謝をささげる次第でございます。 初代工藤由郎は、信州の丸子(現長野県上田市)で工藤房輔と津多子の三男として文久三年(一八六三年)十二月二〇日に生まれ、 この時代の有力な輸出商品でもあった絹製品の素となる養蚕に関わり、 蚕の卵を植付けた蚕紙を養蚕農家に販売し財を成したようです。 その後、東京に進出し旅館を経営することを夢見て、明治二〇年に上京するも、 適当な物件が無く、明治二十四年に再度上京し探したところ、 当時の上総屋旅館の亭主から宿の売却の話が持ち上がり、由郎二十七歳で故 郷の財産を全て処分し買取りに応じ、以来今日迄宿泊業を営むことになりました。 旅館を買収したのは明治二十四年ですが、旅館そのものはそれ以前からあり、 多分江戸時代からあったとも云われております。 また、上総とは、現在の千葉県中部にあたる旧国名の一で、そこの出身者が起こしたものと云われております。 しかし、火災や関東大震災があり詳しいことは残っておりません。 由郎は長野の出身ですので、信州とか信濃と云う名称を望んだようですが、その名の宿は既に存在しており止む無く上総屋の名称を引き継いだようです。 いずれにしても、江戸の伝統を引き継ぎ、形は変わってるお客様をお迎えする宿泊業に携わって来れたことを慶びとし、未来に向かって皆様方にご愛顧頂けるホテルを目指し努力して参ります。 本来二〇二〇年は、東京オリンピックが開催の予定でしたが、残念ながらコロナウィルスの関係で延期となりました。 ホテルかずさやは、新しい時代の要請に答える為、旧館と隣接する商業ビルを取壊し、新築ホテルの建替えを行い、2020年7月に開業致します。 従来の倍の客室と充実した付帯設備を備え、 併せて伝統を引き継ぎ日本橋ならではのホテルを目指して参る所存であります。

【和モダンなレストラン】 創業より長くご愛顧頂いておりますが、 2020年7月から建物を一新してグランドオープンさせたホテルが運営するレストラン事業です。 和モダンをコンセプトにしたレストランになり、お魚や和の素材を取り扱うことが多いです。 しかし、以前の建物で運営していた洋食レストランのファンが多いことから洋食の取り扱いもしております。 【ホテルかずさやと時の鐘通り】 ホテルかずさやの前の道には、時の鐘通りという名前があります。 江戸時代、この通りには時間を告げる時の鐘があったためです。また、長崎のオランダ商館長が江戸参府の際に利用した長崎屋があり、鎖国時代の貴重な文化交流の場として栄えました。 与謝蕪村が俳諧の修行を夜半亭や、忠臣蔵助が投宿していた小山屋もありました。 この時の鐘通りに詰まっているたくさんの歴史を感じていただければ幸いです。